UAゼンセン重点課題
産業政策
GX(グリーントランスフォーメーション)の推進と資源循環の強化
2050年のカーボンニュートラル実現に向け、産業や雇用への影響を検証し、事業転換にともなう雇用の維持・確保、安定、人材育成、リスキリング支援、公共職業訓練の拡充など「公正な移行」の実現に向けた施策を講じる。
あわせて、GXを支える技術開発や設備投資への支援を強化し、再生可能エネルギーの調達・利用に当たっては企業への過度な負担を避ける料金設計や必要な補助措置を講じる。さらに、成長志向型カーボンプライシングにおいて、納得性の高い化石燃料賦課金や排出量取引制度の確立をはかる。
また、脱炭素化の取り組みが進みにくい中小・中堅企業に対しては、省エネルギー診断の活用促進やエネルギー消費量・CO₂排出量の簡易な算定と見える化を支援し、理解促進のための啓発活動を強化する。あわせて、水素、アンモニア、合成燃料等の次世代エネルギーの開発・導入を支援し、産業の脱炭素基盤を整備する。
これらの取り組みに加え、資源循環の推進をGXの重要な柱の一つと位置づける。そのうえで、資源循環システムの構築と技術開発の強化をはかるべく、回収体制の整備、分別・再生技術の高度化、環境配慮設計の普及を進めるとともに、繊維・衣料分野をはじめとした分野別の取り組みを着実に推進する。資源循環を強化することで、製造段階におけるCO₂排出削減と資源効率の向上を両立させ、循環型産業構造への転換を実現する。
政府目標の2050年カーボンニュートラル(炭素の排出実質ゼロ)は、再生可能エネルギーの拡大や既存施設の低炭素化・減炭素化・脱炭素化・高効率化などが求められ、産業・運輸・民生部門においては電化や高効率化、省エネ等の一層の加速が予測されている。カーボンニュートラルの進展にともなう産業や業態の大きな転換あるいは既存の技術や技能の変革にともなう雇用等への影響を注視し、事業転換にともなう雇用の維持・確保、安定など公正な移行を求めていく必要がある。
多くの企業が脱炭素化のための設備更新が迫られることを踏まえ、設備投資等に対する支援が必要である。電気料金については、「再生可能エネルギー発電促進賦課金」(※1)の影響により、事業者の負担が増える可能性がある。企業はさまざまなコスト削減に取り組んでおり、その企業努力を電気料金の値上げで無駄にしない安価で安定した電力供給とすることが必要である。このため、再生可能エネルギーの利用拡大に当たっては、自家発電に限らず多様な電力調達を想定し、電気料金負担が過度とならないよう配慮することが重要である。
さらに、成長志向型カーボンプライシングの一環として導入される排出量取引制度(2026年4月開始)および化石燃料賦課金(2028年導入予定)は、脱炭素投資を促進する制度である一方、企業活動に新たなコスト負担をもたらすことが想定される。これらについては、事業者負担や産業競争力への影響を十分に考慮し、制度の目的や効果、負担のあり方について丁寧な説明を行うなど、理解と納得が得られる制度設計が重要である。
中小・中堅企業の多くは、脱炭素への取り組みが自社の業績に直結しない、GXを推進する人材・ノウハウや資金が足りていない等の課題から、取り組みが進みづらい傾向にある。また中小・中堅企業にとって、カーボンニュートラルや省エネルギーといった脱炭素の取り組みが、まだ身近なものとして捉えられておらず、カーボンニュートラルの重要性やその具体的な方法について理解していない場合、取り組みの開始が遅れる可能性があるため、対応策を講じていく必要がある。
水素等は次世代エネルギー源として幅広い分野(鉄鋼、化学、モビリティ分野、産業熱、発電等)での活用が期待されるため、水素等の開発や導入に対する支援策を求める。
これらに加え、GXの推進にあたっては、製造段階における環境負荷の低減と資源効率の向上を同時に実現する観点から、資源循環の強化が重要な課題となっている。環境省によると、2024年の国内における衣料品の新規供給量は計82.2万トンである一方、その約7割に相当する計55.8万トンが、事業所および家庭から手放され、再資源化に結びつかないまま、焼却・埋立等の処理に回っている。衣料品のリサイクルについては、統一された回収の仕組みや再生利用の手段が十分に確立されておらず、近年は企業や大学、自治体が連携した取り組みが進められているものの、依然として個別・分散的な対応にとどまっているのが実態である。こうした状況を踏まえ、政府が中心となって民間の取り組みや課題を的確に把握・分析するとともに、制度面も含めた必要な対策を検討していくことが求められる。
また、持続可能な資源循環システムの構築に向けては、回収・分別体制の整備に加え、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクルといった分別・再生技術の確立および実用化に向けた研究開発が重要である。これらの取り組みを通じて、繊維・衣料分野をはじめとする製造業全体の循環型産業構造への転換を図っていく必要がある。
※1 再生可能エネルギー発電促進賦課金:再生可能エネルギーの固定価格買取制度(※2)によって、電力会社等が買い取りに要した費用を電力の使用量に応じて電気料金の一部として使用者に負担を求めるもの。
※2 固定価格買取制度:再生可能エネルギー(太陽光、風力、水力、地熱、バイオマス等)により発電された電気を一定期間、固定価格で電力会社等が買い取ることを義務付けるもの。



