UAゼンセン重点課題
地域政策
万引き犯罪・大量窃盗防止対策の推進 ●県(国にも要請)
万引き犯罪・集団窃盗については、手口の多様化や盗犯品の売買が重大犯罪の資金源になるなど、地域の治安基盤を揺るがす状況となっている。加えて、小売業の現場で働く労働者の業務負担はもとより精神的負担の増加や、企業利益の損失など多大な影響をもたらしている万引き犯罪・大量窃盗の抑止・撲滅を図り、安心安全な地域・職場環境をめざす。
具体的には、現場実態の把握を行うとともに、効果性の高い防犯設備の設置支援や増加傾向にある高齢者対策、窃盗事件のタイムリーな情報共有に向けた地域ネットワークの構築などの万引き犯罪未然防止対策など、行政を主体とした取り組みを行う。加えて、消費者教育の強化や地域社会に向けた意識喚起についても、実効性ある対策を検討・実施する。
万引き犯罪については、少年に加え高齢者の犯罪が増加傾向にあるなど、その実態も多様化している。加えて、集団窃盗や大量窃盗など手口も多様化しており、従来以上に深刻な社会問題となっている。また、昨今、ネットのプラットフォームが万引きや集団窃盗による盗犯品の「換金の場」となり、重大犯罪の資金源になるなど、地域のみならず国の治安を揺るがす状況となっている。国内小売業の万引被害総額は年間4,615億円(万引防止官民合同会議発表推定値2010)と推計されている。また、万引き犯罪の認知件数は2021年度まで減少傾向にあったが、それ以降増加傾向にあり、2024年度においても9万8,292件(前年比5.5%増)と増加傾向は続いている。また、エコバック利用者の増加やセルフレジの急増、慢性的な人手不足などを背景に、職場における万引き対応の負担は増加している。万引き・大量窃盗の抑止・撲滅に向けては、事業者も警察も被害届の提出手続きにかなりの時間を要することから、犯罪をしっかり処分することなく「厳重注意」や「微罪扱い」により放免している実態も散見され再犯防止及び抑止につながっていないことが見受けられることから、警察リソースの限界を踏まえた対策の検討も求められる。
また、万引き再犯の背景には、貧困、孤立、中毒なども指摘されている。それぞれの特性に応じた根本的な対策が求められる。とりわけ、高齢者の万引きについては、万引き検挙人員に占める65歳以上高齢者の割合が、2024年には41.5%と前年を上回り、検挙人員も53,211人と前年より約3,800人増と、5万人を超える極めて深刻な水準に達している(警察庁「令和6年の刑法犯に関する統計資料」)。また、高齢者の万引きについては2012年以降、再犯者が初犯者を上回る状態が常態化している。同統計によれば、高齢者の万引き検挙人員のうち、再犯者は初犯者の約1.6倍に達しており、その差は拡大の一途をたどっている。特に検挙された高齢者のうち約7割に前科および前歴があるという事実も指摘されており、再犯率も高い実態である。高齢者が万引きを繰り返す背景には孤独や貧困、病気の存在が指摘されており、自治体におけるきめ細かなサポート(※1)が必要である。加えて、万引犯罪が増加している要因として、簡易に万引商品を転売できる環境があげられる。
「大量窃盗」については全国的にも被害が発生していることから(※2)、警察庁は、都道府県警察やドラッグストア業界、関係省庁、有識者との意見交換を重ねて、ドラッグストアにおける防犯対策指針を取りまとめるともに(※3)、都道府県警察に対して各ドラッグストア事業者と連携した防犯対策を講じることを求める事務連絡を発した(2025年2月)。このような悪質性の高い集団窃盗等に対しては、地域において発生状況を速やかに共有するネットワークの構築も効果的であることから、先行している地域の好事例を水平展開に取り組む。
防犯機器については、AIカメラの設置やロボットなど多種多様な機器が市場に出回っているが、有識者と連携した実証実験により効果性を測定するなどの取り組みが必要であると共に、費用も高額になることが想定されることから、実効性の高い機器に対する国および行政の支援が不可欠である。
※1 自治体におけるサポート事例
・高崎市(群馬県):
市内29か所に設置している高齢者あんしんセンターが地域に出向くことで、万引きなどの犯罪一因となり得る生活困窮や認知症の悩みを抱えた高齢者を早期に発見することや、高齢者の孤立を防ぐ支援等を実施している。(2023年12月高崎市議会)
・岐阜県:
万引き再犯防止に向けて、福祉と医療の2つのアプローチから対策を講じている。福祉的アプローチとしては、保護観察所や検察庁と連携し万引きをした高齢者を生活困窮者自立支援機関につなぎ、自立に向けた就労支援を行うほか、状況に応じて生活保護費の受給や老人ホームの入所手続き等を支援している。さらに、2023年9月より県内6か所に「自立更生者相談窓口」を設置し、保護観察を終了した人が社会から孤立して問題を抱え込むことがないように就労支援や住居支援などの相談支援事業を開始した。
医療的アプローチとしては、依存症には専門的な相談と治療が必要であるとの観点から、県精神保健福祉センターと県内医療機関に依存症相談拠点および治療拠点を設け、依存症相談員の配置や医療スタッフへの研修を行っている。また、本人の依存症への気づきが難しいことや差別・偏見を恐れることで治療につながりにくい現状を踏まえて、刑務所や警察、県地域生活定着支援センター等に相談窓口や治療機関が掲載されたリーフレットを配布し、症状が疑われる場合には適切な相談・治療につなげていく取り組みを進めている。加えて、精神科医療機関、支援団体、警察等で構成する「岐阜県依存症地域支援機構会議」を設置し、事例や対応を共有するなど連携体制の強化に向けた取り組みを推進している。(2023年12月岐阜県議会)
・大分市(大分県):
万引き予防に向けて、小売店等へのヒアリングを実施するとともに、内容に応じて福祉部門をはじめとした庁内関係部署や警察などの関係機関との情報共有を進めていくことが確認された。(2023年9月大分市議会)
※2 令和5年のドラッグストアにおける万引き認知件数は1万3,870件となり、統計を取り始めて以来過去最多となった。また、万引き全体の認知件数に占める割合は約15%と高い水準で推移しているほか、外国人グループ等による組織的な大量万引き事犯も発生している。来日外国人が関与した事件の被害額は1件あたり8万8,531円で、日本人関与の事件(1万774円)の8倍となっている。(警察庁調べ)
※3 ドラッグストアにおける防犯対策指針には、外国語での音声アナウンスによる注意喚起、高額商品は空き箱で陳列する、防犯カメラの増設や高度化などが挙げられているが、詳細については非公表(ドラッグストア事業者限り)となっている。



