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重点継続課題

労働・社会政策

国際的な公正労働基準の順守と人権デュー・ディリジェンスの推進

ILO中核的労働基準10条約のうち未批准の第111号条約の早期批准を行なう。

労使協働による人権デュー・ディリジェンスの取り組みを進めるため、集団的労使関係の強化や、政府「ガイドライン」において、人権デュー・ディリジェンスの全ステップにわたる労働組合の関与を明確に位置付ける。

さらに、労働組合が参画して産業別ガイドラインの策定を進めるとともに、産業別の苦情処理メカニズムの設置を検討する。

人権監査を実施する際の費用負担や情報収集および人権確保に必要となるコストを含む発注のあり方について、ガイドラインにおいて考え方を示す。また、人権監査において、ユニオンショップ協定の有効性といった国際基準と整合性のある日本の法制度を踏まえた対応を行うよう周知徹底する。

企業規模を問わず人権デュー・ディリジェンスの取り組みが推進できるよう、実践的なガイダンスの拡充や国別、製品別人権リスクのデータ提供を行う。特に労働基本権に関しては、国際労働組合総連合(ITUC)の「グローバル・ライツ・インデックス」を採用し、最新の情報を提供する。

ビジネスと人権に関する国別行動計画(2026-2030年)の実施において、人権を保護する国家の責務として、独立した人権機関を創設する。また、政府ガイドラインに基づく企業の取り組み状況を確認・評価し、ステークホルダー参画のもと、人権デュー・ディリジェンスの法制化に関する議論を開始する。

法制化にあたっては、中核的労働基準を最低限対象リスクにするとともに、労働組合の関与を明文化する。

<背景説明>

ILOの中核的労働基準は、2022年のILO総会で「安全で健康的な労働環境」が追加され、5分野10条約となった。これら10条約(※1)のうち、日本は未批准であった強制労働廃止条約(第105号)を2022年7月に批准し、さらに職業上の安全および健康に関する条約(第155号)の批准も実現した。日本が批准していない中核条約は差別待遇(雇用・職業)に関する条約(第111号)のみとなった。全ての中核的労働基準の批准にむけて、一層の取り組みが求められる。

さらには、1号(1日8時間・週48時間制)をはじめ、47号(週40時間制)、132号(年次有給休暇)、140号(有給教育休暇)など、日本は労働時間・休暇関係の条約を一本も批准しておらず、批准に向けた取り組みが求められる。

欧米では、サプライチェーン等に対する人権デュー・ディリジェンス(人権DD)の義務化が進んでいる(※2)。特に、2024年5月にはEUで企業持続可能性デュー・ディリジェンス指令が採択され、加盟国は、2026年7月までの国内法化が求められる。本指令は、EU域内企業のみならず、一定要件を満たす日本企業など域外企業にも適用される点で影響が大きい。

国内においても、政府や産業別ガイドラインの策定が行われるなど(※3)、人権尊重を求める動きが加速している。また繊維産業では、特定技能1号外国人を受け入れる際の上乗せ要件として国際的な人権基準への適合が求められており、狭い範囲での法制化ともいえる。経済産業省がこの動きにあわせ繊維産業向けの人権監査基準(JASTI)を策定した際には、UAゼンセンがワーキンググループに参画し意見反映を行った。人権DDに係る遍く審議会等において、同様に労働組合の参画を確保する必要がある。

企業規模や人的・財政的リソースの違いによらず人権DDに取り組めるよう、各国の関連法令や国別・産業別人権リスクの最新情報など、政府は実用的な情報提供の拡充を急ぐ必要がある。加えて、人権尊重に係る取り組みの推進体制を整備するため、独立した人権機関の創設を早急に実現すべきである。

また、日本政府のガイドラインの効果を確認し、法制化に向けた検討を行うなど、具体的なフォローアップが必要である。法整備を行う際には、実効性ある人権DDの大前提である労働基本権の確保や労働組合の関与を前提に行う必要がある。

加えて、発注側、受注側が対等な立場で人権確保の取り組みが行えるよう、人権監査の実施方法や費用負担の適正なあり方の明確化も必要である。また監査の際、ユニオンショップ協定に対して、ILO第87号条約(結社の自由及び団結権保護条約)に違反しているのではないかと指摘を受けるケースが報告されている。ILOは、ユニオンショップ協定について「条約と整合するが、労働者団体と使用者との間の自由な交渉の結果であることを条件とする。」という考え方を示しており、政府ガイドラインに記載するなどし、周知徹底をすべきである。

なお、多国籍企業のサプライチェーン上の諸課題に関して労使の取り組みを定めるグローバル枠組み協定(GFA)は、人権DDを労使で進めるうえで有効な取り組みであり、日本では髙島屋、ミズノ、イオンが締結している。具体的な取り組み事例も作成されており、積極的な発信が求められる。

また、アパレル産業で先行して取り組みが進んでいるサプライヤーリストの公開についても、情報開示の質を高め、サプライチェーンの透明化に資する取り組みであり、好事例としての発信が効果的である。

※1 ILOの中核的労働基準10条約 ※2 人権デュー・ディリジェンス法制化の状況 ※3 日本政府・労働組合・業界団体の動き