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UAゼンセン重点課題

労働・社会政策

多様な働き方や家族のあり方に対応した社会保険制度の構築

副業・兼業、フリーランス、非正規雇用など多様な働き方を前提に、多様な働き方を支える社会保障の設計を進める。

すべての働く者に社会保険を適用させる制度の実現に向け、企業規模要件の速やかな撤廃とともに、労働時間要件を2028年10月施行の改正雇用保険法の適用要件と同じ週所定労働時間10時間以上とする。また、副業・兼業をした場合であっても、労働時間や賃金を通算することにより社会保険が適用されるよう整備する。

単身世帯、共働き世帯、ひとり親世帯、同性カップルなど、多様な家族形態に対して中立的な給付・負担の仕組みを構築する。

特に第3号被保険者制度については、世帯単位での制度設計を前提とした制度であり、制度趣旨や公平性、社会保障制度の持続可能性の観点から見直しを行う。その上で、就労が困難な人々(病弱者、軽度の障がい者、子育て・介護・失業・学び直し中の者など)に対する基礎年金の保障の必要性を踏まえ、現行制度が果たしている役割を十分に検証し、準備期間や激変緩和措置等を講じながら、将来的には第1号・第2号・第3号といった被保険者区分を廃止し、すべての人が所得比例年金制度に加入する方向で制度改革を進める。

保険資格・給付要件の分かりやすさを高め、就業調整が生じないような制度にするなど是正をはかる。

社会保険の適用拡大にあたっては、キャリアアップ助成金の活用促進や労使の保険料負担を軽減する措置を導入するとともに、企業が賃金・労働時間を通算するシステム等を導入した場合には、必要な経費の一部を助成する。

医療保険制度においては、適用範囲の拡大に加えて保険対象範囲や負担額の上限なども議論されているが、被保険者の保険料負担だけでなく、実際の医療費負担や医療サービスのあり方、保険者の財政・運営に影響を及ぼすため、そのあり方について多角的な視点で着実に議論を進め、解決をめざす。

<背景説明>

近年、働き方や家族のあり方、ライフスタイルは大きく変化している。副業・兼業の進展やフリーランスの増加により、単一の雇用関係を前提とした働き方は例外となりつつある。また、共働き世帯の増加、単身世帯の拡大、ひとり親世帯や同性婚など、多様な家族形態が広がっており、「男性稼ぎ主・専業主婦世帯」を想定した社会保障制度は、現実との乖離を深めている。

こうした社会構造の変化にもかかわらず、現行の社会保障制度は、雇用形態や世帯類型によって保険料負担や給付水準に大きな差が生じており、制度の分かりにくさや不公平感を生んでいる。結果として、働く意欲を損なう「就業調整」や、必要な保障から取り残される人々を生み出す要因ともなっている。

社会保険制度は、これまで企業規模や労働時間等の要件に基づいて適用が制限されてきたが、2020年以降の制度改正により、段階的に適用範囲が広がっている。特に2022年からの企業規模要件の緩和により、パートタイムや短時間労働者への適用が進み、制度の裾野が広がってきた。今後は、対象となる労働者および事業者に対して、制度の趣旨やメリット※(将来の年金・医療保障等)を周知徹底することが不可欠である。2025年6月に成立した年金制度改正法では、社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化をはかる観点から、短時間労働者の賃金要件撤廃や企業規模要件の段階的な撤廃などの改正がなされたが、労働時間要件の緩和や第3号被保険者制度の見直しなどについては継続課題とされた。働き方に中立的な制度設計にむけて、継続的な議論が求められる。

「年収の壁」による就業抑制については、UAゼンセンの意識調査等でも実態が明らかであり、多くの組合員が「年収上限がなければもっと働きたい」との声をあげている。

特に、年収106万円・130万円の壁が労働時間の調整につながり、人手不足の深刻な業種に大きな影響を及ぼしている。

第3号被保険者制度は、1985年の創設以来、被扶養配偶者の老後保障を支えてきた制度であるが、家族形態の多様化や共働きの増加、女性の就業率の上昇により、時代との乖離が指摘されている。「性別役割分業」的な価値観の温存や、非正規雇用者との不公平感、就業抑制の誘因など、制度的課題が顕在化しており、丁寧な議論を経た上で、将来的な廃止に向けた改革が必要である。

社会保障制度を中長期的に維持・発展させるためには、「誰が、どの段階で、どのように支え、どのような保障を受けるのか」という制度の基本設計を、社会の実態に即して再構築することが不可欠である。そのためには、税と社会保険料の役割分担を明確化し、社会全体で支える仕組みへの転換をはかる必要がある。

具体的には、社会保険料については、被保険者としての権利と直接結びつく給付に重点的に充てつつ、所得捕捉が困難な働き方も含め、応能負担(能力に応じた負担)の原則を徹底する。一方で、所得再分配や社会全体で支えるべき基礎的な保障については、税を中心とした財源確保を進めることで、制度の公平性と納得性を高めることが重要である。

その上で、就労が困難な人々(病弱者、軽度の障がい者、子育て・介護・失業・学び直し中の者など)に対する基礎年金の保障の必要性を踏まえ、現行制度が果たしている役割を十分に検証し、激変緩和措置を講じながら、負担能力に応じた公平な年金制度への移行を進める。制度移行にあたっては、就労の多様性が保障されることを前提とし、短時間労働者の時間単位の最低賃金目安を1,500円に引き上げることや、「103万円の壁」の引き上げによって税・保険料負担のバランスが確保されることを条件に、段階的な廃止を含む制度改革を検討する。

将来的には、所得比例年金制度を基本とする年金制度への移行を見据え、第3号被保険者制度を廃止する方向で丁寧な議論を進める。その際、すべての人が支え合う「全世代型社会保障」の理念に基づき、負担と給付の公平性を確保しつつ、社会的包摂の視点からセーフティネットの整備をはかる。

医療保険制度については、限られた医療資源を有効活用する視点が不可欠である。しかしながら、OTC医薬品の保険適用除外や高額療養費制度の安易な見直しは国民皆保険制度の根幹にも影響し、普遍的な医療アクセスへの影響も懸念されることから、慎重な対応が必要である。

※厚生年金保険に加入すると、将来基礎年金に上乗せする形で報酬比例の年金(厚生年金)が終身で受給できる。障害がある状態になった場合には障害基礎年金に加えて障害厚生年金が受給できる。死亡した場合には遺族は遺族厚生年金を受給できる。また、医療保険(健康保険)の被保険者となることで、傷病手当金や出産手当金など、ケガや出産によって仕事を休まなければならない場合に賃金の3分の2程度の給付を受給できる。