UAゼンセン重点課題
労働・社会政策
労働時間改革とワーク・ライフ・バランスの推進
過労死・過労自殺を防止対策し、健康、安全、ワーク・ライフ・バランスを確保するため、今般の労働基準関係法制の見直しにおいて、時間外労働の年間上限を特別条項による延長時を含め360時間とすること、ならびに、休日労働と月45時間超の時間外労働の割増率50%への引き上げを行うとともに、連続勤務日規制(休日労働を含めて13日)の導入を行う。また、副業・兼業における労働時間の通算は堅持する。
さらに、勤務間インターバル制度(11時間)の義務化、および勤務時間外の業務連絡を制限する「つながらない権利」を確立する。
年次有給休暇の最低付与日数20日への引き上げ、2週間を目標とした連続休暇取得の義務化、年10日程度の病気有給休暇の法制化、および、週35時間を目標とした法定労働時間の段階的削減の検討を開始する。
働き方改革関連法の施行以降、一定の進展は見られるものの、依然として日本の労働時間は他の先進国に比して長く、特に非正規・サービス業を中心とした業種では長時間労働が常態化している現状がある。一方で、2025年10月に発足した高市政権では、労働時間規制の見直し(緩和を含む)が政策課題として掲げられ、心身の健康確保と本人の選択を前提に、時間外労働規制のあり方の再検討が厚生労働大臣に指示された。これにより、時間外労働上限の運用弾力化や、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度の活用拡大などが検討俎上に載せられている。この動きは、長時間労働の是正や過労死の防止を目的とした働き方改革の流れを反転させるものであり、現在過労死ラインの水準となっている上限規制を緩和するような見直しは行うべきではない。UAゼンセンとしては引き続き上限規制の取り組み強化を訴えていく。
時間外労働の上限規制や割増賃金率の見直しは、現行制度では一部の例外を認めているが、制度の実効性を高める観点から、上限時間の厳格化と割増率の引き上げを求める。勤務間インターバル制度の義務化についても、導入済みの企業は中小企業で1割以下にとどまっており、疲労回復のための時間確保を全労働者に保障する観点から、義務化を含めた制度整備が急務である。また、副業・兼業者には、時間的制約が強く、単一の雇用では生計が成り立たず、複数就業を余儀なくされる層が多いことから、所得不安定や過重労働によって健康下の影響が見過ごされやすい。健康確保と生活保障の観点で労働時間通算の仕組みは堅持されるべきである。
年次有給休暇の本来の趣旨は一定期間連続して職場を離れ、心身の健康を回復することにあり、ILO条約(第132号条約)においても、少なくとも2週間の連続休暇取得が求められている。こうした考えを踏まえ、2週間を目標とした連続休暇の義務化を行うとともに、通常の労働者に対する付与日数の引き上げを求める。あわせて、短時間・少日数労働者についても、労働基準法に定める比例付与の考え方に基づき、通常の労働者に準じた公平な休暇付与を確保し、真の意味での「休暇の質」を高める必要がある。加えて、年10日程度の病気休暇の法制化については、風邪や通院等の軽度な体調不良で欠勤しても収入が保障される制度を整備することにより、感染症拡大防止や定着率向上にもつながるとして、議論がなされている。
法定労働時間については、現行40時間を段階的に週35時間へと引き下げる方向性での議論が必要であり、これは高齢者や家庭を持つ労働者の参画促進にも資する。欧州諸国においては、週35時間制や4日労働制など多様な形態が実現されており、働き方の柔軟性が経済成長や生活満足度向上に寄与しているとの報告もある。
また、「つながらない権利」の法制化は2025年1月に公表された厚生労働省の労働基準関係法制研究会報告書をもとに労働条件分科会でも重要な検討課題とされている。「つながらない権利」とは、従業員が時間外に、仕事上での電話・メールなどの一切の連絡を拒否できる権利であり、権利を導入するプロセスにおいては、①労働者が通常の業務時間外には働かない権利、②労働者が権利を行使しても悪影響を被らない権利、③他者がつながらない権利を尊重する義務、の3つの要素がある。「つながっている時間」が長いことは、業務時間外における「心理的距離」(仕事のことを考えない程度)と「リラックス」の度合いが低く、「バーンアウト」の度合いが高くなる傾向があると言われており、精神的な疾患リスクが高くなる。
企業の中では、勤務時間外のメール・電話対応を制限するためのマニュアル整備や自動転送の仕組みを導入する動きも見られており、実効性ある制度としての確立が求められている。加えて、フランスでは2016年に法制化され、スペイン・ベルギーなどでも導入が進んでいるように、「つながらない権利」はすでに国際的な規範となりつつある。日本国内でも労働弁護団や連合などが法制化の必要性を提起しており、今後は企業ごとの自主的取り組みだけでなく、制度的裏付けが求められる局面に入っている。
こうした流れを踏まえ、UAゼンセンとしても、健康確保・生活の質向上・多様な人材の就労促進の観点から、「つながらない権利」を含む労働時間政策の強化が喫緊の課題であると認識し、実効性ある施策の実現を図っていく必要がある。
[各国の主な事例]
・フランス:従業員50人以上の企業を対象に労使協議の上、業務時間外の「つながらない権利」に関する定款の策定を法令で義務付け
・イタリア:「つながらない権利」を雇用契約に明記することを義務付け
・ポルトガル:緊急時に連絡可能とする例外は設けられているものの、業務時間外の連絡の原則禁止を定め、違反した企業には罰金が科される
・ベルギー:労働協定にて、従業員が20人以上の企業では、勤務時間外に連絡を拒否できる「つながらない権利」を導入
・スペイン:「個人データ保護とデジタル権利保障に関する組織法」にて「つながらない権利」を規定
・メキシコ:「テレワーク法」にて「つながらない権利」を使用者に義務化



